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実は世界の最先端? イスラム圏の金融事情

イスラム社会は「宗教色が強い」というイメージばかりが先行して、経済のことはあまり伝わってこない。イスラム経済の特徴について一橋大学の加藤博教授に聞いてみると、意外にもそれは世界の先端を行くものだった。

「ホリエモンがやっていたような、キャッシュフローによって利潤を生むビジネスは、実はイスラム経済では昔からやっていたことなのです。イスラムではお金をためることで利益を得るという不労所得は『悪』であるという考えがあります。よって短期的なスパンでお金を回し、利益を生み出す、キャッシュフロー型の経営ビジネスが奨励されているんです」  とはいえ、イスラム独自の商習慣はある。

「シャリーアとよばれるイスラム法に基づいて、リバー(利息)が禁止されています。イスラム銀行は『金利なき銀行』と言われ、無利子が前提となっているため、利子を取って貸付けする通常の銀行とは異なります。しかし、儲けることを否定していないため、銀行は投資などで利潤を得ています」  しかし、宗教的な原則も、近年は変化しつつある。

「近年のイスラム社会は、イスラム法を広く解釈し、自由主義経済に当てはめ、経済行為をするという側面があります。資本主義に乗った形のイスラム経済にはIMFや世界銀行も注目しています。ドバイでは中東初の商品先物取引所もでき、商取引は活発化しています」 イスラム経済が世界から注目される理由は、その宗教上の特性を生かしたものであることだという。 「基本的に富を所有することは認められていますが、イスラム経済は『カネがすべて』というような思想ではない。社会に還元しなければならないという前提があるため、教育や社会保障、ひいては広くイスラム教徒に還元するようなものでなくてはならないという考えがあります。

『環境』や『福祉』を考える、近年のビジネスモデルとマッチしているといえるでしょう」 イスラム社会には2つの相反する側面があり、それゆえにバランスが取れているとも分析する。 「アルカイダに代表されるような、極端な原理主義の側面と、世界でも先端を行くビジネスモデル。

イスラム経済は、イスラム法に基づく『倫理』と、市場経済の『規制緩和』が、ちょうど良い均衡を保っているんです」 イスラムはもともとアラブ商人たちが信奉した。経済活動には寛容なのだ。